「水」の記憶 ポエム集 №2

目次

水のつぶやき

夕暮れ時に
疲れた身体を癒そうと
浴槽にお湯をはる

幸せな一時

お湯をすくって
顔を寄せると
静かに水が語り出す

ここにたどり着くまでの
身近な記憶を

東南アジアの川
ゴミが溢れて異臭が漂い
それでも濁った水で人は顔を洗い
感謝の言葉を述べるという

都会のビルに降り注ぐ雨
時間に追われ苛立つ人が
壊れた傘をその場に捨ておき
足早に通り過ぎて行く

山間の町に降り積もる雪
病院の窓辺に留まると
結晶に変えた姿を見て
少女は微笑みを浮かべた

この先は、海へと向かう
一巡した役目を終えて
母なるゆりかごで
次への旅を待つ

人の感情は常に揺れ動いている
もう数え切れないほど
多くの場面を通り過ぎ
その思いに呑まれることは無いと

ただ、人の豊かな感情は
「温かい」心地良さをもつ

留めておけぬ水

呟き終わると
するりと手から
抜け落ちて
湯船へと戻る

遠い旅路を経て

私の冷えた身体を
温めてくれる

人も水も同じエネルギー体

「温かい」感情は
伝播するらしい

ありがとう

見送る水に
想いを込めた

雪の華

降り積もる雪
小さい子どもは喜んで空を見上げ
大人は下を見て転ばぬように
歩みを進める

同じ環境にあっても
雪だと喜ぶ人がいて
雪害と嘆く人もいる

自然の摂理そのままに
雪として舞い降りる

そこに意味をつけるのは
それを受け取る人の心

雪は人の心を感じ取る

良い悪いではなく
ただ、そのままに

そして時間と共に
目には見えぬ姿に
形を変えて旅っていく

時間に追われ
慌ただしい現実に
囚われていると
その姿を見ることはない

心にゆとりがないと
見れぬ華を
「雪の華」といふ

川の流れ

人々の生活を支える
川の流れは
自然の循環に支えられ

山から川へ
川から海へ
海から空へ
空から地上へ

長き旅路を
繰り返す

水の恩恵に預からずに
旅立つ人はいないのに

人はその循環を省みない

自然は人の手に委ねられ
成長もすれば破壊も進む

時に川は増水したり枯渇したり
その警鐘を私たちに伝えている

穏やかな川の流れは
当たり前では無いのだと

水滴は見える姿

見えるものしか
信じぬと多くの人が口にする

水は大気中
ほとんどが見えずに今を漂う

ガラス窓やコップについた
一粒の水滴にようやく
その姿を見る

人の目に映るものが
全てだとしたら
私たちの生きる世界は
なんと窮屈なものだろう

形あるものしか
認められないとしたら
身体に宿る命は無いことになる

水滴ひとつ
大海に戻れば同化するように

私たち人の命も
肉体を失えば自然に戻る摂理

今見る現実しか信じれぬとは
人の命の儚さゆえか

水滴一粒
見える姿に
全てを含む

見えぬ命の一粒が
見える人の姿であれば

見られているのは
個々に宿る
命の姿ということか

雨の憂い

梅雨時は雨が降り注ぎ
乾いた大地に潤いを与える

現代社会はアスファルトに覆われ
山は切り崩され
森林は侵食され
降り注ぐ雨を恵として
貯留する機能を失っている

温暖化の現象で
一度に降る雨の量も
人々のコントロールを
超えてしまう事がある

雨は万物、命の源

雨の音は人々に癒しを与え
雨の雫は動植物の喜びとなる

その均衡が保てないのは
万物の営みが崩れている証

依正不二

人々の憂いは
雨の憂いとなって
降り注ぐ

HSPの独自の感性を生かしたポエム集  第三弾はこちらから

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